Data is GOD!
ビジネスにとって何が大事かと問われれば、私は迷わずこの言葉を答えます。この言葉との出会いは、アジアのCMOが集まるイベントで、Netflixのアジアマーケティング責任者との会話でした。Netflixの社内で繰り返される言葉だそうです。この言葉を聞いた時、私のビジネスに対するスタンスをこれほどよく表す言葉はないと思いました。
Data is GOD!とは、「データはあらゆるものより優先される」ことを意味します。特に、一神教中心の西欧社会での「GOD」の意味は絶大です。Data is GODの世界では、あらゆるものよりも、データが最も重要なのです。
デジタル化による「C」の革命
これをビジネス用語でいうと「データドリブン」になります。データドリブンとは、「事業運営における意思決定をデータ分析結果に 基づいて行うこと」です。PDCAの精度を高めるうえで最も重要なのは、データドリブンであることです。特に、PDCAでデータが重要になるのはC(検証)です。Dの結果得られる顧客行動データを分析し、改善策を考える。その徹底により、PDCAの精度は確実に上がっていきます。
そもそも、デジタルビジネスの世界で、P<DCAという逆転現象が起きた理由は、Cの重要度が増したことが背景にあります。それは、伝統的マーケティングとデジタルマーケティングを比較してみるとよくわかります。
伝統的マーケティングの代表的手法のTVCMとデジタル広告を比べてみましょう。Cの観点から2つの手法を比較すると大きな違いがあることが分かります。TVCMの最大の問題点は、何億円も投資して実施したTVCMを実際に誰が何回見たのかを広告主が把握することができないことです。TVの前で誰が見ていたかを知るすべがないため、TVCMの効果検証(C)は、アンケート型のリサーチに頼ることになります。リサーチ時にCM視聴経験や、商品購入意向を質問し、CMを見た記憶がある人とない人で商品購入意向の差分を図り、広告の効果を可視化します。
一方、デジタル広告は世界が全く異なります。ブラウザやスマートフォン端末単位で、誰が広告をみて、そのうち何人が自社のサイトを訪れ、どのページをみて、商品を購入したかどうかをトラッキングできます。しかもほぼリアルタイムで把握可能です。
このCで得られるデータ精度の向上は、デジタルマーケティングにおけるCの重要性を伝統的マーケティングとは比較にならないほど上げました。これだけ充実したデータが得られるのであれば、PDCAによる改善活動は、データドリブンで行うのが当然です。
なぜデータが「神」になれないのか?
ここまで、データドリブンの重要性とデジタルマーケティングによる環境変化の話をしてきました。おそらくここまで読みすすんだ多くの方が、ビジネスはデータドリブンであるべきだと考えていると思います。
ここで、疑問が湧くのは、ではなぜ「データドリブン」というビジネス用語が存在するのかです。ここまでの議論でデータドリブンに同意してくれた読者の方は、全員が明日から実践するはずです。しかし、もしそうであれば、わざわざ「データドリブン」という言葉など生まれるはずがありません。そう考えると、理由は一つしかありません。口では「データは重要」と言いながら、実際にはデータドリブンになれないからです。
ここではデータドリブンになれないビジネス意思決定を2パターンに分類して説明します。「意思決定者の意向優先パターン」と「関係者の意向優先パターン」です。前者の代表例は「社長が〇〇と言っている」、後者は「大口取引先のバイヤーが〇〇と言っている」です。要は、データ分析結果に基づく論理的な結論より、影響力の大きい誰かの一言が優先されてしまうのです。組織で働いたことがある人であれば、誰しも直面したことがあるはずです。
Data is GOD!の世界では、データはあらゆるものに優先されます。それは、CEOであろうと、取締役会であろうと、大口取引先であろうと例外ではありません。ただ、組織で仕事をすると、それを実践するのは、想像しているよりもはるかに困難です。だから、「データドリブン」という言葉が存在します。
データドリブンはトップダウン
組織がデータドリブンであるために最も簡単な方法は、経営トップが徹底してデータドリブンであることです。自分の「勘」や「経験」に基づいた発言をしない。徹底的にデータドリブンに意思決定をする。そうすれば、配下の組織は必ずデータドリブンになります。なぜなら、部下はデータドリブンな提案をしないと合意を得られないからです。
DCA型組織構築においてデータドリブンは、PDCAの精度と高速回転にならぶ成功の絶対条件です。ここで妥協しては、決して競合に勝てるDCA型組織にはなれません。
マネジメントの立場の読者の方は、まず自分がデータドリブンを徹底できているかを自問してください。重要なのは「例外」をなくすことです。トップが例外を作ると、組織全体で例外が必ず横行します。
マネジメントでない読者は、難しいかもしれませんが、自社がどうすればデータドリブンになるのか問題点を同じ志を持つ同僚と議論し、データドリブンな範囲を少しずつ広げていきましょう。
データを「都合よく使う」組織は、データドリブンではありません。Data is GOD! これこそがデータドリブンなのです。

