継続して成果を出し続けられる人となかなか成果を出せない人の違いはどこにあるのか?
多くのビジネスパーソンが答えを知りたい問いです。25年以上、日本だけでなく海外の優秀な人と仕事をしてきた結論として、成果を出せる人と出せない人の間の決定的な違いは、継続的に学び続けられるか否かです。ただ、この話をすると、多くの人が、どこの大学院でMBAを取ったのかとか、どれだけ多くのビジネス書を読んだのかを思い浮かべます。しかし、ここでいう「学び続ける」ことの意味は、学歴や、読んだ本の多さを表すのではありません。
知識の蓄積と知恵の創造
私は、学習には大きく二つの種類があると思っています。一つは、教科書などを通じて大量のインプットを行い蓄積するタイプの学習です。受験勉強や資格試験などが代表例です。このタイプの学習は、主に「知識」の蓄積量を増大させることを目的とした学習です。
学習のもう一つのタイプは、正解が決まっていない課題に対する解決策や改善策を習得するものです。美味しい料理を作る、スポーツで高いパフォーマンスを得る、新しいクリエイティブを生むための「知恵」を蓄積することが主な目的です。
ビジネスで成果を出すために必要なのは、もちろん後者の「知恵」を得るための学習です。料理、スポーツ、アート、ビジネスに共通するのは、必ずしも「正解」が一つに決まっていないことです。このことは、料理を例に考えれば容易に理解できます。「美味しい料理の味を定義しろ」と言われて全ての人が同意する答えを提示できる料理人は存在しないはずです。しかし、もしレストランを開こうと思えば、提供する料理の味は何らかの方法で決めなければなりません。何を基準にするかを決定し、それを実行し、客に方針に沿った料理を提供しなければなりません。これを決める根拠となるのが、長年の学習から得られた「知恵」なのです。
経験と期間は連動しない
そして、この知恵を継続的に蓄積することが「経験」です。よく、「○○についての経験は●年あります。」という発言を耳にします。私はこの種の年数に大きな価値を置いていません。なぜなら、経験とはその仕事に携わった期間によって価値が決まるわけではないからです。経験はその仕事から得られた「知恵の蓄積」によって価値が決まるからです。
毎日忙しく働いている。数字も見ている。経験年数も増えている。でも、上がる成果の量と頻度は数年前と変わらない。それは、知恵を蓄積できていないからです。
一方、成果を出し続けられる人は、意識的か無意識かは別にして、この知恵を得るための学習を継続的に行っています。そして、知恵を蓄積しています。一度この学習方法をマスターできると、その人には知恵と経験が継続的に蓄積されていきます。さらに、知恵を使い、課題解決を実行し、その結果を検証することで、一度得た知恵はアップデートされ、高次元の知恵へと昇華する。
つまり、成果を出し続けられる人は「知恵創造の成長スパイラル」なのに対し、成果を出し続けられない人は「停滞ループ」になっている。知識は積みあがっているのに、知恵が積みあがらない状態なのです。
知識を生むためのData Thinkingとは?
ここまで理解できたとすれば、次に湧く当然の問いは、知恵を得るための学習方法とは?というものです。ところが、私の知る限り、この問いに体系的に応えてくれる書籍やフレームワークで良いと思えるものに出会ったことがありません。ビジネスで直面する課題を解決し、それを知恵として学習し、次の成果を生む。このプロセスをトータルで説明するよいメソッドが提供されていないのです。このため、成果を上げ続けられる人はますます成果を出し、そうでない人は上手くいったり、行かなかったりで停滞することになります。
このBlogでは、この課題に正面から取り組みたいと思います。具体的には、Data Thinking(データ思考)という手法を提案します。Data Thinkingとは、「現実の現象をデータにより観測し、その意味を理解することで改善のサイクルを回し、現実に刺激を与え、課題を解決・改善する。その連続的な活動を通じて、知恵を蓄積・学習するプロセス」です。
重要なのは、①現実をデータで観測することで、客観性を担保すること。②データの意味を理解することで問題点を発見し、課題の改善策を検討すること。③改善サイクルを継続的に回し、現実に変化をもたらすこと。④①~③のプロセスを繰り返すことで、継続的に知恵を生み出し蓄積すること。つまり、Data Thinkingとは、Dataを起点に、現実へ働きかけ、その結果を再びDataで検証するサイクルです。
この連続した学習により、成果が成果を生むサイクルを造れると私は考えています。
このData Thinkingの内容を具体的に説明する前に、この手法がどのように生まれたかを紹介することで、単なる机上の空論ではないことを説明します。私は、大学院生時代に社員20名程度であった楽天で働き始めて以来、大手ゲーム会社、大手人材会社など3つの事業会社でマーケティングの責任者としてキャリアを積み、現在は、コンサルタントとして、大企業からスタートアップまで様々な企業の課題解決のサポートをしています。
Data Thinkingの手法は、主に25年に及ぶ事業会社でのマーケティングの責任者として、事業成果を上げながら、数百人に及ぶマーケターを育成してきた経験を体系化したものです。
そもそも日本には事業会社で成果を出せるマーケターの人材プールが絶対的に少ないという問題があります。このため、私は急速に拡大する事業成長を支えるマーケティング組織を構築するため、採用ではなく、人材育成を重視する方針で自部署のパフォーマンスの向上を実現してきました。
この過程で、どのような人材が成長できるのか。成長できる人材と伸び悩む人材の差はどこにあるのか。そのサポートをするためには、どのような機会を与え、どのようなフィードバックをすべきなのか。このような問いについて成果を出しながら考え続けてきました。
Data Thinkingは、ビジネスの現場の実践を体系化した手法です。私自身が成果を出し続けてきた手法なのです。
AI時代にも重要性を増すData Thinking
執筆時点の2026年のビジネスにおける最大のトピックは間違いなくAIです。誰も想像しなかったスピードでのAIの進化は、多くのビジネスパーソンに自分のキャリアに対する不安を感じさせます。成果を出し、AIに代替されない人材にどうすればなれるのか?
確実なことは「知識」で人間がAIに勝つことは不可能だということです。知識量を増やすタイプの学習ソリューションをいくら実行しても、かなりの確率でその努力はAIに駆逐されます。しかし、私は、「知恵」を生み出すことはAIが発達しようとも、人間に優位性が残る領域だと思います。なぜなら、AIはDataを分析し、改善案を提示できます。しかし、現実の結果に責任を持ち、改善を継続する主体にはなれないからです。Data Thinkingとは、単なるデータ分析・活用の手法を説明するものではありません。データを読み取り、意味を理解し、改善活動を行い、現実に変化を与え、その結果を検証する。この連続的なサイクルを回すことで知恵を得て、学習し続ける手法を体系化したものです。
Data Thinkingが、成果が出せずに悩む多く方のお役に立てることを心から願っています。
それでは、「停滞ループ」を抜け出し「知恵創造スパイラル」を作るために、Data Thinkingの世界の扉を開きましょう。
