業績が悪くなると「それっぽい」説明をされて組織変更。でも業績は回復しない。
企業で仕事をしていると、多くの人が経験したことがあるシチュエーションです。頻繁に起こる組織変更を横目に見ながら、私はこのような無意味な意思決定が繰り返される理由を考えてきました。無意味だと考える理由は、組織変更が、業績低迷問題の原因の解決になると納得できることがほとんどないからです。
なぜ経営者は組織変更したがるのか?
実行力の強い組織を作るために、適切な組織を整備することは必要不可欠です。その企業が置かれている状況、人材の量と質に適した組織形態を選択し、マネジメントすることで、長期的な組織強化が実現します。一方、冒頭に紹介した組織変更の多くが、「無意味だ」と感じられる理由は、それが組織状況を客観的に分析したうえでの意思決定になっていないからです。ここでは、なぜ、経営者がそのような行為をしてしまうのかを考えたうえで、組織構築のあるべき姿を考えます。
多くの経営者が安易に組織変更に走る理由は次の3点で説明できます。
- 経営者が100%コントロール可能
- 組織変更理由のロジックが簡単に組める (メリット・デメリットの入れ子構造)
- 本質の問題点が分からなくても対応したように見える
経営者が100%コントロール可能
まず、「経営者が100%コントロール可能」から説明しましょう。組織変更の利害関係者は、原則社内の人員のみが対象です。このため、意思決定した内容を、そのまま実行することが容易な経営判断対象です。例えば、魅力的な新商品を作って、売上を増大させるのは、経営者の意思決定による実現困難度ははるかに低くなります。しかも、大規模なリストラを伴わなければ、組織変更にかかるコストもほとんどかかりません。
この特徴は、経営者が組織変更する際の心理的ハードルを下げることに有効です。決断すれば、思い通りに実現し、重要な経営判断をしたようにふるまえる。経営者にとって、利用しやすい素材なのです。
組織変更理由のロジックが簡単に組める
変更理由のロジックが組みやすい特徴は、この心理的ハードルの低さをさらに後押しします。冒頭で触れた「それっぽい」理由が提示される理由がここにあります。企業の組織形態は、大きく2つのパターンがありますが、実はこの2つのメリットとデメリットはトレードオフの関係です。一方の利点は、他方の欠点になり、その逆も成り立ちます。つまり、どんな状況にも対応可能な完璧な組織構造など存在しません。
例えば、マーケティング部門がCMO配下に集客される組織(集約型)と事業部門に分散して配置される組織(分散型)で考えてみます。集約型は、人材やナレッジを1か所に集約できるため、マーケティング全般のコントロールやレベルアップがしやすくなります。一方、事業部門とのコミュニケーションがしにくいのが欠点です。そして、この利点と欠点は逆にすると、そのまま分散型の特徴を説明できます。


この入れ子構造の活用で、組織変更は、その理由と改善結果を容易に説明することができます。例えば、集約型組織の企業が、事業部門とのコミュニケーション不足の問題提起を理由に、組織を分散型組織に変更する。これにより確実に、目の前の課題の解決策を提示できるのです。
本質の問題点が分からなくても対応したように見える
この入れ子構造の性質は、3点目の理由についての説明に繋がります。集約型組織で運営されている業績が低迷する企業で、事業部門からコミュニケーションの問題提起がなされる。経営者は、業績回復の手は打たなければならないが、根本原因が分からない。しかし、何もしないわけにはいかない。このような状況で、入れ子構造を利用すれば、目の前の問題を確度高く解決できる組織変更は、改善策を講じたと社内に提示することのできる格好の対象になるのです。
組織変更では、ほとんどの問題は解決しない
このように、組織変更は、経営者として問題解決の意思決定に利用しやすい特性を持っています。しかし、この特性を一度理解すれば、組織変更には、本質的な問題を解決するものとそうでないことがあることが分かります。本質的な組織変更とは、業績が低迷している理由の根本原因が、採用している組織形態のデメリットに起因している場合に限定されます。それ以外のケースにおける組織変更は、本質的な課題が見えていない状況で行われる対症療法に過ぎません。
本来、組織形態の議論とは、とてもシンプルなものです、各組織形態の特徴を正しく理解し、適用条件や機能させるために必要な要件を整理する。それさえできれば、あとは、適用条件や機能要件が変化したかどうかを客観的に判断すればよいだけです。
ただ、その選択を誤ると、組織のPDCAは健全に回らなくなります。適切な意思決定がされない、調整に時間がかかる、ナレッジが蓄積されない、人材育成が出来ない。様々な弊害が発生します。そのような事態を避けるためには、組織形態の特徴と原則を正しく理解しなければなりません。
パフォーマンスの組織変更に意味はない。しかし、正しい組織形態の選択はPDCA成功の必要条件です。
私が問題だと思うのは、多くの企業が、PDCAが回らない原因を分析する前に組織変更してしまうことです。
本来は原因が、意思決定なのか、オペレーションなのか、データなのか、人材育成なのかをロジカルに分析することです。
組織形態はその後に検討すべき論点です。

