数値目標を厳しく管理しても、改善は加速しない。
組織の改善スピードに課題を感じている多くの経営者が抱える悩みです。目標を明確にするために、数値目標を設定した。管理が緩くならないように、数字は日次・週次で細かくチェックしている。数値が未達な場合は、メンバーに改善プランを検討させ、進捗も管理している。それでも改善は進まない。
数値目標管理の弊害
近年、多くの組織で、部署パフォーマンスや人事評価の基準を明確化するために、数値目標を取り入れることが増えています。基準があいまいになりがちな「プロセス評価」「スキル評価」よりも、結果が自動的に出るため、納得感を得やすいことも人気の要因です。
私も、25年以上、部下のマネジメントをしてきた経験から、数値評価、結果責任重視の利便性、重要性は理解しています。しかし、DCA型組織の活動を最適化するために、過度に数値評価、結果重視に偏重したマネジメントは、弊害の方が大きいと私は考えています。その理由は、結果重視に偏重した組織では、「失敗」が許容されにくくなるからです。
DCA型組織の成功にとって、「失敗」は不可欠な要素です。「失敗」は、一般的には否定的な意味で捉えられます。前述の数値管理を行っているマネジメント手法において、高く評価されるのは、日次、週次の数値目標を着実にクリアし続ける社員です。途中のマイルストーンの目標値を外すことは、「失敗」を意味し、「改善プラン」の説明を求められます。つまり、「失敗」をした人は、課題がある社員だと認識されてしまいます。
失敗は悪。失敗した社員には改善を求める。一方、失敗しない人には何も言わない。数値管理・結果重視の組織によくみられる考え方です。しかし、このような姿勢でマネジメントをしている組織では、DCAは活性化しません。なぜ、PDCAにおいて、失敗が重要なのでしょうか?
チャレンジがなければ改善は生まれない
PDCAにおいて失敗が重要な理由は、失敗が「チャレンジ」の結果であるからです。チャレンジとは、何らかの仮説や改善プラン対して行うDにあたります。そもそも、DCAで重要なのは、完璧に予想することができない前提で、DCAを繰り返しながら、顧客理解を深めることです。そして、「完璧に予想できない」のであれば、Dは成功が保証されたものではありません。一定のリスクをともないます。そもそも、最初から正解が分かっているものは、改善活動ではありません。それを行っていないのは、単なる怠慢です。改善活動とは、まだ見ぬ領域へのチャレンジであるべきです。結果重視の組織と、失敗奨励型の組織を比較すると、その差は明確です。

2つのサイクルにおいて、失敗の後の2項目に注目してください。結果責任重視の組織では、失敗に対して「責任追及」をします。失敗は「悪」だからです。どうすれば、その失敗の再発を防止できるのかを説明させます。このような追求を受けた社員にとって、最も簡単な対応は、すでに分かっている失敗しない方法を参考にすることです。つまり前例踏襲です。
一方、失敗奨励の組織では、失敗とは次の改善活動の検証材料と位置付けられます。チャレンジが失敗か、成功かが重要なのではなく、その結果がなぜそのようになったのかを理解することが重要です。それを理解することで、成功の再現性を高めたり、失敗を糧にした次のチャレンジのアイディアの検討が可能になります。
デジタルマーケティングのPDCAにおいて「前例踏襲」は最も排除すべき考え方です。組織が「前例踏襲」を善と考え始めると、改善活動は必ず停滞します。
失敗を奨励できる組織カルチャー
「失敗は成功のもと」という諺がある通り、失敗を糧にして改善を重ねることの重要性は、昔から理解されています。しかし、DCA型組織において重要なのは、失敗を「奨励」するレベルにまで組織にその重要性を浸透させることです。PDCAの精度と回転速度が高い組織ほど、他社が経験したことのない未知の課題に直面します。そもそも、他社が経験した課題を前例踏襲でトレースしているような組織が業界のトップに立ち、そのPDCA活動で競争優位を築くことなどできるはずがありません。前例がない領域を走ることが、トップランナーに課せられた環境です。
このような状況で、失敗を恐れ、チャレンジをやめてしまったら、改善が止まることは容易に想像がつきます。
人間だれしも失敗はしたくないものです。出来れば、失敗せずに、順調に進めたいと思います。しかし、それでは改善は止まってしまいます。そのような事態を避けるために必要なのが、「失敗の許容」ではなく「失敗の奨励」なのです。よいチャレンジは、称賛の対象にするくらいの組織風土が必要です。失敗を恐れて何もしないよりは、失敗覚悟でよいチャレンジをすることを強く求める。そのような組織カルチャーをどこまで徹底して作り切れるか。それが、DCA型組織構築にとって重要なポイントの一つです。

