データドリブン経営とは?

データドリブン経営の定義

データドリブン(Data Driven)のもともとの定義とは、下記のようにコンピュータサイエンスにおける計算モデルのことであるが、

「計算機科学における計算モデル(抽象的な計算の方法)のひとつである。データ駆動においては、ひとつの計算によって生成されるデータがつぎの計算を起動し、つぎつぎに一連の計算が実行される。」(出展 Wikipedia

これをビジネスの世界に置き換えると、各種データに基づいて意思決定をしていく経営手法であると一般的に理解されている。このデータドリブンなビジネスの手法は、DX化が叫ばれ、多くのビジネスがデジタル化、AI化されていこうとする中で、その重要性は増している状況にあるといえる。

ただ、この定義を聞いて、多くの人は当然のことであり、たいして目新しいものに聞こえないという人も多いのではないだろうか。私の場合、学生中から25年近くデジタルビジネス、ネットビジネスの世界で生きてきたということもあるかもしれないが、少なくともこれまで働いてきた会社や、一緒に仕事をしてきたパートナー企業の中で、データが重要ではないという会社にあったことはなかったと思う。

では、なぜ今更、データ重視の経営というようなある種当然の話がもてはやされるようになってきたのだろう?その理由を考える際に、おそらく失敗に終わる考え方は、データが重要でない理由を考え出すという思考法だろうと思う。私の経験上、よほど特殊なケースでない限りデータが重要ではないということがビジネス上で発生することはほとんどないため、この論法で攻めようとすると、おそらくそれっぽいロジックを組むことは難しいのではないかと思う。少なくても私には、思いつかない。

ただ、別の考え方として、あなたの会社やビジネスにおいて、明文化されていないにしても、データより重視されて意思決定がなされているようなケースが見当たらないかという聞き方をすると、「ああ!」と思いつく例はないだろうか?

データドリブン経営の障害となる典型例

このケースの最も代表的な例が、私も何度も経験したが、「社長/役員の〇〇さんがこういっている」というケースで、これを私は典型的な例として、「誰が正しいパターン」と呼んでいる。組織で仕事をしていると、どうしても組織構造の上位レイヤーにいる人間の意見がとおりがちで、その人物の意思決定の思考回路がデータドリブンであれば問題ないのだが、データよりも経験や感覚が重視されがち(頭が悪いのではないと信じたい)である場合は、結果的にデータドリブンにならず、データという客観的事実を重視して現場が出した結論がひっくり返るということが起き、現場のモチベーションが下がりまくるということが起こりがちである。

もう一つの代表例は、「マーケはOKなんだけど、営業がNGと言っている」とか、「当社はこの方向で行きたいのだが、大口の取引先の〇〇社がうんと言わない」というような「関係者がNGパターン」である。このような例も、残念ながら、それなりの頻度で発生しがちである。社内での力関係で自部署の意見が通らないとか、企業としての交渉力が立場上弱く説得ができないなど、現実にはなくすことは難しいのも事実である。

データドリブン経営の実現はまずマネジメントレイヤーから

ここでは代表的な事例を2つほど紹介したが、そのような視点で自分のおかれている環境を見直してみると、自分の会社が当然のことと思われたデータドリブンな経営ができているのかというのを評価することはできるし、多くの場合、改めてデータドリブンな経営ということが言われている理由が理解できるのではないだろうか?

会社としてデータドリブンは重要だということになり、今日からデータドリブンで行こうと決めたとしても、多くの流行りの経営手法同様に一朝一夕には行かないのも事実である。ただ、私の経験上、自分たちはデータを重視して企業経営を行うという意思を明確にし、それを経営のトップ層が実践すれば、中長期的に会社の下位レイヤー層の仕事の仕方、意思決定の仕方、上司への提案の仕方は必ず変わってくるものである。そのために最も重要なのは、経営のトップ層が根拠の説明もなく「自分はそう思わない」というデータに基づかない意思決定を行わないことを徹底すべきである。もし部下の提案に同意できない場合は、その理由を明確に説明し、もしその説明にデータ的な論拠がない場合は、それをサポートするデータの追加分析を依頼するか、自分の推論・仮説が間違っているというデータの追加分析を部下に指示するなどして、自分の意思決定をデータドリブンなものする努力をすべきである。もちろん、最初の自分の結論が結果的に正しい場合は、時間の無駄に思えるのかもしれない。しかし、自分の会社の経営が論拠のない誰かの感覚の集合体によって行われるのか、ある程度ロジック建てされたデータドリブンな経営がなされているのかのどちらが良いかを考えれば、少なくても私は後者の方がはるかに良いと思う。再現性のある意思決定が一貫して行われることで、中長期的には成長できる会社になるのではないかと考えている。