計画を緻密に立てても、改善は思い通りに進まない。
こういわれて、すんなり同意する人は少ないと思います。しかし、デジタルマーケティングで、成果が出せていない多くの組織が見落としているポイントです。事前にしっかり準備をして、改善活動を丁寧に行う。なぜ、それが改善の障害となるのでしょうか?
なぜ、綿密な計画がPDCAの精度も落とすのか?
PDCAを成功させるためのポイントは、「精度高く」と「高い回転速度」の2つを両立させることです。綿密な計画がPDCAの改善活動の障害になる理由の一つ目は、Pに時間をかけると、PDCA全体の回転速度が落ちるからです。この点については、詳しい説明は不要でしょう。4つあるプロセスの一つに時間をかければ、プロセス全体の進捗速度は遅くなるからです。
一方で、精度を上げることの障害になる点については、すんなり腹落ちしないかもしれません。一般に、物事を確度高く進めるために、事前に入念な準備をすることが悪いとは思いません。しかし、デジタルマーケティングのPDCAにおいては、多くの場合Pに時間をかけすぎることは、改善の精度を上げることの障害となります。
そもそも、PDCAの精度を上げるために必要なのは、P・D・C・Aそれぞれのプロセスの精度を上げることです。綿密な計画を立てることは「P」の精度を上げることは間違いありません。ここで問題なのは、Pの精度をあげることが、D・C・Aそれぞれのプロセスの精度を上げるかどうかです。
DCA型組織の改善活動において、D・C・Aの精度は、その回転により向上します。Dの結果を、Cで検証し、Aで改善プランを考える。Aで考えた改善プランを2回目のDで試して2周目が始まる。2周目以降のDの精度を上げるカギは、前の周回におけるCとAの精度です。つまり、DCA型のプロセスにおいて、PDCAの精度を上げる要因は、DCAの回数を増やすことなのです。
Pの精度がPDCAの精度を上げるのは、PDCAが1回転しかしない場合です。DCAを行っても、次のアクションをすぐに行わない場合には、Pに時間をかけ、入念な準備をして、Dの確度を高めることは有効です。しかし、DCA型組織は、DCAを高速で回転させることを想定しています。この場合、DCA自体の精度を高めるのは、Pではなく、DCAそのものなのです。
計画とは、やってみればわかることを予測すること
これも、三木谷さんの受け売りですが、楽天では「走りながら考えろ」とよく言われました。これは、まさに、デジタルビジネスの世界では、P<DCAが成功の基本原則であることの言い換えです。
私は、計画とは、「やってみればわかることを、不十分な情報をもとに予測すること」であると考えています。ビジネスには不確実性はつきものです。どんなに優秀な人でも、あらゆる状況を想定して、完璧な計画を作ることはできません。ただ、伝統的マーケティング的環境では、DCAの精度と回転速度を上げることが難しく、P→Dの精度を上げる必要がありました。このため、マーケティング理論には、Pの精度を上げることが求められてきました。
しかし、マーケティングのデジタル化、特にC(検証)の精度向上により、マーケティングのフォーカスはDCAへと移行しました。PDCAによる改善の「質」と「量」はDCAの回転速度に依存しているのです。

Pとは仮説を立てること
では、Pには何が求められるのか。DCA型のモデルで重要なのは、「綿密な計画」ではなく、実行・検証・改善のための出発点となる「仮説」を立てることです。「やってみればわかることを、不十分な情報をもとに予測すること」に膨大な時間をかけることではないのです。
DCA型組織に必要なのは、綿密な計画をその通りに実現する力ではありません。仮説を素早く市場にぶつけ、結果に応じて柔軟に変える力です。多様化する顧客志向を完全に理解し、完璧な計画を作ることなどできません。それよりも、DCAをしながら顧客と対話を続け、走りながら顧客理解を深める。そして、最初の仮説に間違いがあれば、柔軟に変更する。計画・戦略とは、常に修正し続けるものであるべきなのです。走りながら考える姿勢こそが、圧倒的な改善力で、競争優位を作る武器になるのです。

