楽天に就職する

このブログをご覧になる方の大半は私のことをご存じない方が殆どだと思うので、ちょっと詳しく自己紹介させていただければと思う。一応自分の会社の宣伝も兼ねたBlogなので、少し自慢げに受け取られてしまうかもしれないが、一応嘘はつかない前提で正直に書かせていただく。

※ちなみに、簡単な自己紹介で十分という方はこちらから。

スタートアップベンチャーに就職しよう!

1999年5月、一橋大学の大学院2年生の頃からアルバイト/インターンとして働き始めたのが、楽天入社の切っ掛けである。一橋という大学は学生の人数のわりに当時大企業に存在したらしい、採用学生数の枠が比較的多かったらしく、超就職氷河期といわれた時代であったが、周りの友人でいわゆる一流企業に就職することに困っている人はほぼ皆無で、私の所属した学部生時代のゼミなどは2/3くらいの学生が大手都市銀行(という言葉も今は死語?)に就職するという感じの環境であった。そんなわけで、周りからはなぜそのような環境で、創業して3年目で20人程度しか社員のいないベンチャー企業に就職したのかと聞かれるが、理由は単純にベンチャー企業で仕事がしたいと決めていたからだ。

その切っ掛けは、大学院の授業で出会った米倉誠一郎先生である。忘れもしない経営哲学という授業でお会いしたのであるが、まず授業がめちゃくちゃ楽しかった。その内容は、2週間に一人、企業経営者を授業におよびする。そこで、学生たちは前週の授業で準備したその企業の分析、特に現状の問題点の分析内容を直接プレゼンする。それに対して経営者がどのように考え、どうしようとしているのか、そもそも学生の分析が間違っているのか議論を2時間くらいかけてするという内容である。そこに参加していただいた経営者の方がなかなか凄くて、グロービスの堀さん、CCCの増田さん、お亡くなりになったヤマト運輸の小倉さん、ソフトバンクの孫さんなどが、わざわざ20数名の学生のために足を運んで下さり、お話を聞かせていただけた。参加された経営者のラインナップを見れば気が付く方もいるかもしれないが、ラインナップされている経営者はいわゆるサラリーマン経営者ではない。すべて起業家と言われる経営者である。この経営者との対話を通して、米倉先生が一貫して学生に話していたこととは、シリコンバレーを見ろ、日本経済の未来を作るのは大企業ではなく、ベンチャー企業だ。イノベーションを生むのは起業家であるという事であった。そもそも、自分の父も会社を経営しており、サラリーマンというものを身近に見たことがほぼなかった私にとって、その言葉が物凄く素直に刺さってしまい、大学院1年後期のその授業を切っ掛けに、大企業に就職するというアイディアが一切なくなってしまった。という分けで、今考えると少々チャレンジングな期もするが、新卒でスタートアップのベンチャー企業の就職先探しが始まる分けである。

当初は、5人程度で凄く上手くいきそうなスタートアップ企業を探そうとした。その方がリターンも大きいし、そもそも楽しそうだと思っていた。しかし、結論からいうと5人くらいのスタートアップで、これは成功しそうだという会社には全く出会えなかった。今考えればそれはそうであろう。そんな会社がそこらへんにゴロゴロ転がっていたら、誰も苦労しないわけである。すぐに大成功するベンチャーキャピタルが作れる。当時の感覚としては、このまま行きたい会社を見つけるまで頑張るのであれば、寧ろ自分でゼロから起業してしまった方がまだ確率が高いのではないかという感じであった。でも、もちろんそんな勇気もないし、自信も全くなかった。

三木谷さんに会いに行く

というわけで、ベンチャーでももう少し規模の大きい会社を探してみようと思い始めた。そのように考えた始めたころ、米倉先生が、NHKBSの経済討論番組のようなものに出演しているのをたまたま見ていて、先生と対談していたのが三木谷さんであった。今思い返せば、ちょうど楽天市場が少しずつ話題になりだしたころで、三木谷さん自身もベンチャー企業経営者として注目され、メディアに露出し始めた時期であった。ちょうど、企業探しの枠を広げてみようと思い始めていた時期だったので、すでにテレビで取り上げられてしまっているような大きな会社に入るのは自分としては若干不本意であるが、このまま行くとベンチャー企業に入ると意気込んではいたものの、良い会社を見つけられずプータローになってしまうのではないかと不安になり始めていた時期であったため、一度楽天を見に行ってみようと考えた。と思って、楽天市場のWebサイトの運営会社的なページの三木谷さんの紹介を確認すると、今では考えられないが、写真の下に三木谷さんのメールアドレスが載っていた。これは話が早いと思って、早速、「米倉先生の教え子でテレビの対談をみたこと。楽天市場に興味を持ったこと。一度話をする機会をいただきたいこと。」などを書いてメールを送ってみた。すると結構すんなり返事が返ってきて、一度会社に遊びに来い。話をしようということになった。それで、アポをとり、オフィスに行くことになった。こんな感じが私と楽天の出会いであった。

アルバイト~学生社員に

そんなこんなで、最初は学生のアルバイトとして働き始めた。今ではちょっと信じられないかもしれないが、三木谷さん付のアルバイトで、三木谷さんに何をすればいいのか聞きに行き、電話取りとか、海外の新しいネットのサービスを調べてレポートを書いたりみたいな仕事から始めた。最初は9-17時みたいな仕事の仕方をしていたが、周りに合わせて仕事をし始めたら数週間で9時半から終電までほぼ毎日会社にいるような生活になった。ベンチャー企業で働くって、おそらくそんな感じと想像していたので、苦でもなかったのであるが、さすがに三木谷さんもバイトにそこまで仕事をさせるのに気が引けたのか、大学を出ているのであれば、大学院を卒業しなくても雇ってやるから大学院を中退してすぐに正社員になれと言われた。10月ごろの話だったが、2年生の前期にすべての単位は取り終わっており、修士論文を書くだけだったので、それであれば土曜日に働くので、ゼミの日だけ一日平日休みにさせて欲しいと頼んで、あっさりOKをもらい学生社員として新卒になる前に社会人になってしまった。私の経歴で、院の修了と楽天の入社の順番が逆転しているのは、こんな背景である。

そんなわけで成り行きで社会人になってしまった分けであるが、今考えるとあり得ないくらい運がよかったと思っている。おそらくこの30年くらいの間に起業された日本企業の中で、5本の指に確実に入るであろう企業で、20人の会社が11年半で1万人以上に成長するまでを見ることが出来たのだから。いろいろ大変なことも当然あったが、結論としては、三木谷さんには心から感謝をしている。