トライト時代

なぜトライトに?相当悩んだ転職

20年8月というコロナ禍に転職した。いろいろな人から、何で?と言われた。コナミでは最後執行役員になっていたので、一部上場企業の中核事業会社の役員から何でわざわざ無名の企業に移るのかと。余りそういうことを気にする方ではないのだが、給与、履歴書もグレードダウンするような選択をなんでわざわざするのかと言われれば、合理的には説明することは難しい。

そもそも、知り合いのエージェントから相談された時は、全く名前も聞いたことのない会社であった。人材ビジネスに興味もなかった。コナミ当時は月1くらいでいろいろなお誘いをいただいていたが、コナミの仕事にやりがいも感じていたので、殆ど話も聞かなかった。ただ、コロナ禍で在宅勤務が始まり、良いやり方も分からず暇にしている時に声がけされて、なんとなく話を聞いてみたくらいの切っ掛けである。

話を聞いてみて、興味を持ったポイントは3つくらいあった。一つ目かつ最大の理由は、マーケティング予算がびっくりするほど大きかったことである。具体的な額は申し上げにくいが、コナミの日本向けのパフォーマンスマーケティング予算の倍以上の額であった。名前も知らない会社が、それほど大きな予算を使っていることに驚いて、興味を持つことになった。二つ目は、介護を始めとした医療福祉系の企業で元気がある会社があるということが面白いと思った。日本の超高齢化という社会問題は、ニュースなどで医療費高騰など負の側面の話はよく聞くが、そのビジネスチャンスを捉えて元気な会社というのは余り聞いたことがなかった。向こう30年くらい確実に成長が約束された市場にビジネスチャンスがないわけがないと思ったので、面白いと思った。3つ目が、それほどの予算を使い、大きなビジネスチャンスもありそうな会社なのに、話を聞くとマーケティング組織が全く出来上がっていなさそうな事だった。その話を聞いたとき、楽天とコナミでの経験から、こうやればたぶん上手くいくというのが結構すぐに想像出来た。

という分けで、話をきいて面白そうだなと思ったが、正直決断するのは難しかった。だた、最後の決め手は、単純に面白そうで、コナミに残るよりも付加価値が出せそうという事であった。さすがにひとつの部署を5年もやると次の5年で同じ付加価値を出せと言われても難しいなと感じていた時期であった。やれることとしたら、もう一度海外に行って、本気でグローバルマーケを極めるのがいいかなとおぼろげに思っている時に、急にコロナ禍となり、そんなことは想像もつかなくなってしまった。そんな折、トライトの話を聞いたときに、絶対に上手くできると思ったし、その仕事が一人で楽天でマーケティングを始めた時となんとなく似ていて面白そうに思えてしまった。第3者的には賢い選択には思えないかもしれない。でも私にとって重要なのは、仕事が面白そうかどうかということである。

私は、座っていても部下が勝手に出来上がった仕組みの中で成果をあげてくれるような組織で仕事をすることに何のモチベーションも感じない。その意味でこれから組織を作るというミッションが魅力的に見えてしまったというわけだ。

20年のマーケティングの集大成的な仕事

トライトでは、まず単なる集客部隊であったマーケティング部門のKPIを根本から見直し、マーケティングの活動と会社全体のパフォーマンスが連動するようにオペレーションの仕組みを大幅に見直した。また、CRMに大きな改善余地があったため、こちららは3年で予算を10倍くらいに一気に増やし、集客効率を大幅に改善することができた。また、データドリブンなマーケティングを実現するための基盤となるDWH、BIツールなどを早急に整備し、チームが、また会社全体が正しいデータのもとに経営できる基盤を整えることが出来た。Webサービスのシステムも抜本的な作り変えが必要であったので、これも2年くらいかけて行った。最後に、新規事業としてダイレクトリクルーティングのサービスもゼロから作り上げた。

結局トライトでの仕事は3年半と今までで一番短い期間となったが、個人的には20年近く学んできたマーケティングのキャリアの総まとめ的な仕事で、非常にやり甲斐もあったし、十分な成果も出せたと自負している。人も組織もないと事前に聞かされていたのでは当初は期待してはいなかったのであるが、結果的には部下や同僚にも凄く恵まれ、今の仕事に繋がる出会いもあった。

特に良かったと思っているのは、楽天やコナミよりもぎゅっと絞った事業範囲の中で、これまで培ってきたマーケティングの知識を相当丁寧に事業に組み込むことが出来たので、これまでのマーケター人生において、おそらくもっとの精度の高いマーケティングを構築できた気がしている。

このBlogで書いていることも、経験値としては楽天から始まる20年の経験からの蓄積をもとにしているが、トライトでの3年半で自分の考えをメンバーに説明することを通じで、自分の中で整理できたので、なんとなく文章として表現できるようになった気がしている。

簡単な自己紹介にしようと思ったら、なんかだいぶ長くなってしまったが、このBlogは、こんなマーケター人生を過ごしてきた人間が、日々現場でマーケティングに向き合いながら考えてきたことを表現している。私が胸を張って言えるのは、2002年にマーケティングを職業として始めて以来、一貫して現場でマーケティングをしてきたことである。毎週毎週現場の数字をみて、何が起こっているのか考え、解決法を現場のメンバーとともに考え続けてきた。

マーケティングとは言葉のごとく、マーケットに向き合う仕事である。マーケットを見続けてきた人間でなければ分からないことがたくさんあると思っている。そんな日々の中で考えてきたことが、誰かの役に立てば幸いである。